今回は談話室の常連、NAHAさんの2本目、鈴木政吉を紹介します。
鈴木政吉-1
外観です。シェイプは不思議なひょうたん型で、 上下の張り出しの幅にあまり差がありません。 弦はピンで止める方式ですが、もともとスチール弦仕様だったように思います。 というのも、いろいろと資料を当たると、戦前の日本では湿気が多いため、 羊の腸を加工した本式のガット弦では持ちが悪く、 スチール弦からギターが発展した、とあるからです。 したがってガット・ギターが日本で本格的に普及し始めるのは、 オーガスティンによってナイロン弦が製造された、戦後からのことになるそうです。
鈴木政吉-2
バックです。ご覧の通り、ビッシリと虎目が入っています。 チラリとしか見えませんが、サイドも虎目がビッシリ。 すなわち、バイオリンと基本的に同じ素材を用いて作られているわけです。 ネック材は黒く塗られているためわかりません。
鈴木政吉-3
付属していたのは、オールドのマーチンなどに見られる棺桶(コフィン)型ケースで す。 おそらく檜製で、不思議な素材(天然の樹脂を加工した、グッタペルカあるいはバル カナイトではないかと思うのですが)で覆われていますが、すでにボロボロです。 ところが内張は非常にしっかりしており、古さを感じさせません。
鈴木政吉-4
ラベルです。弦を張ったまま撮影したので、ちょっと見づらいですが、 「No.306 Nagoya 1931」と印刷とペンで書き込まれているのが見えます。
手に入れた後、ヤマハのコンパウンド弦を張ってみましたが、音量は小さいものの、リバーブがかかったような、深く澄んだ音がします。現代的なアコースティック・ギターの音とはまるで異なりますが、これはこれで非常にいい音だという気がします。